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(ねぇ、ジェイド、僕のシリウスはジェイドだよ)
細い指を天に向け、君が笑ったのはいつの日のことだろう


成り行きでディストを旅の道連れとした2日目の夜
その世界には街らしい街もなく、その夜も野宿となった

「何をしてるんですか?」
いつもの椅子に深く腰掛け、夜空を見上げていたディストに何気なく話しかけた
「眠るのがもったいなくて」
ディストはただ夜空を眺めていたわけではなく、何かを書きとめていたらしい
手にしたハードカバーのノートにしきりにペンを走らせている
「なるほど。
 何も言われずと進んで見張り役を買って出るとは、流石、下僕の鏡ですね」
「だぁーれが下僕ですかっ!! 今晩の見張りはアナタでしょう!押し付けないでください!!」
「あまり騒がないでください。 みなが起きますよ」
視線で示した先には、焚き火の周りで眠る子供たち
その寝顔に毒気を抜かれたように、ディストは手にしたペンを一周させる
「アナタ、いつから保父さんを始めたんです・・・?
 似合わないことこの上ない・・・」
「大変不本意ながら、全く同感です」
二人同時にため息を吐き出して、顔を見合わせ、二人同時に不愉快気に視線をそらせた

「何を書いていたのですか?」
視線をそむけたまま、何気なくたずねる
「星図ですよ。 少しでもこの世界のことを知っておいたほうが良いでしょう」
ディストは再び、ペンを紙上に戻し、カリカリと音を立てる
「とりあえず、オールドラントとは全く別の星・・・または世界だということははっきりしました
 星の並びが、オールドラントのどの地方、どの季節から見たものとも異なりますから」
「・・・貴方は現状について、どう考えていますか?」
「現段階では返答しかねます。不確定かつ不在な要素が多すぎますから」
アナタもそうでしょう?と返され、無言で肯定する
そもそも、こんなことに・・・こんなところに来てしまったきっかけすらわからないのだ
正体不明の敵勢力もあり、そんな中で未だ合流できない仲間も居る
元の世界にも問題は山積みなわけで、こんな意味不明な状況で時間を食っているわけにもいかない
知らずに形の良い眉が寄り、渋った顔になるジェイドの隣で、不意にディストが笑った
「なんですか?」
意識せず怒気のこもった声を発してしまったが、ディストは気にした風もなく・・・というより、それに気づかず、再び小さく笑った
「いえ、なんだか懐かしくなっただけです」
ディストはノートにペンを滑らせながら、微笑む
「覚えていませんか? 二人で、天体観測をしたことがあったでしょう?」
「・・・」
言われて、ジェイドは記憶を廻らせるが、そんな映像はひとつも浮かんでこなかった
「・・・まだケテルブルクに居たころ・・・、アナタがね、夜、外に立っていて・・・
 私がそれを見つけて、そう、ちょうどさっきのアナタみたいに、
 『何をしてるの?』って聞いたんですよ
 そうしたら、アナタは『天体観測』って答えたんです」
ジェイドは再び記憶をめぐらせることはしなかった
それはたぶん、幼い頃の自分が彼についた嘘だったからだ
きっと、自分は星なんて見ていなかった
恐らく、そんな綺麗なものを見ていなかった
「私が隣に居る間、アナタは私の話を聞くばかりだったけれど、ヒトツだけ、教えてくれたことがあります」
「・・・なんでしたかね」
ディストの、珍しく手袋をしていない指先が天を示す

「シリウス」

この空で最も輝く星
「・・・あぁ」
嗚呼、そうか、その時だ
何気なく彼が尋ねた言葉と、自分の返答、そして、

(ねぇ、ジェイド、僕のシリウスはジェイドだよ)

「・・・」
何気なく視線をおろせば、そこには微笑みながら星図を描く銀糸の姿

――今での彼のシリウスは、自分でありえるのだろうか?

不意に浮かんだ問いかけを、まさか本人に尋ねることもできない
「星、綺麗ですね」
ジェイドの特に感情もない言葉に、ディストは律儀に頷く
「えぇ・・・とても」

小さな笑みはまるで星の煌く音のようで

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わざわざタクティクス設定でやるほどのネタでもなく・・・(汗)
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