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※特にあらすじのない単発パラレル※
※近未来っぽいです※
※しかも、全体像は短いくせに、今日分じゃ終わらない(時間の都合)※
※明日続きが書ければなと・・・※
※よろしければ※
2/28 追記
でも、まだ終わらない・・・(汗)
※近未来っぽいです※
※しかも、全体像は短いくせに、今日分じゃ終わらない(時間の都合)※
※明日続きが書ければなと・・・※
※よろしければ※
2/28 追記
でも、まだ終わらない・・・(汗)
――まずい、遅刻してしまう
分厚いファイルを何冊も抱えて、白衣の研究員らしき男が小走りに廊下をかける
どうしてなんだ、会議の日というといつも運がない
前々回の会議では寝坊し、前回は廊下で転んだ拍子に眼鏡が割れて、今回は資料のファイルが見つからなかった
結局、部下が間違って持っていったコトが判明し、そのファイルを手に彼は走っていた
エレベータホールで、降下のボタンを押して待つ
――どうしよう、階段で行ったほうが・・・
焦りながら時計を確認する
会議まではあと10分で、会議室は3階、自分が居るのは最上階の12階
階段は無理だ、体力的に
なにより、6機あるエレベータのうちの1機に明かりが灯り、まもなく到着することを知らせてくれた
チーンと今も昔も安っぽい音が響き、エレベーターの扉が開く
そこから2,3人の人が出るのを見送り、入れ違いに駆け込む
すぐさま『閉』のボタンを押そうとしたが、
「待って」
引き止める声に気づき、反射的に『開』のボタンを押してしまった
駆け込んできたのは、長い髪の男
走りこんできたのに、どこか優雅で、思わず見入る
その視線が、その男と交わる
赤い紅い眼
「一階を、お願いできますか?」
「あ、はい」
現実に戻った意識は、考えることもなく、階を指定すると、開きっぱなしだった扉が閉じる
そして、自分の目的の階を押し忘れていたことに気づき、指を伸ばした瞬間
その手が掴まれた
「え?」
その掴んだ手が誰かなんて、考える必要はない
このエレベータには、自分と、さっき駆け込んできた男の二人しかいないのだから
「ディスト博士、ですね」
静かな揺れと、どこか居心地の悪い浮遊感
「な、なん・・・ですか?」
呼ばれたとおりの名札をつけた研究員は、片手にまとめていたファイルに力を込める
しかし、ディストの怯えた眼とは裏腹に、その男は綺麗に微笑む
「単刀直入に言いますと、
貴方を、迎えに来ました」
「む、かえ?」
答えながら、ディストは視線をエレベータの階表示に向ける
7・・・6・・・5・・・と、降りていく数字が、人生のカウントダウンのように感じる
「ゆ、誘拐・・・ってコトですか?」
「あぁ、怯えないでください
手荒な真似をするつもりはありません」
・・・4・・・3・・・2・・・、会議室のある階も通り過ぎ、エレベーターはノンストップで、1階にたどり着いた
「そして繰り返し言いましょう
私は、貴方を、迎えに来たのです」
チーンと、エレベーターのベルが鳴り、扉が開く
「行きましょう、貴方の居場所はココじゃない」
男は、ディストが手にしていたファイルを奪い取り、エレベーター内に放り投げる
「なっ、なん、なに、なんで・・・?!」
頭が何一つついていかない
けれど、ディストは、男に掴まれたままに手を引かれ、エレベーターから出る
取り残されたファイルだけを閉じ込めるように、エレベーターの扉は閉じ、再び上の階を目指していった
事はとんとん拍子に進み、ディストは車に乗せられて、すでに研究所を後にしようとしていた
途中、駐車場に抜けるまでに大声を出して助けを呼ぼうと思ったが、今、隣でハンドルを握る男に、「静かにしていてくださいね」と言われると、魔法にでもかけられたように、声が出なくなってしまった
けれど、それは不愉快な感覚ではなく、どこか、当然であるというような、拒絶のない従属
おかしい、自分はこんな男は知らない
まさか、自分が気がつかないうちに意識や意思を奪う薬でも飲まされてしまったのだろうか?
「シートベルト、付けてくださいね」
「あ、はい」
言われるがままに、シートベルトをつける
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まただ
今、正にそのことについて悩んでいたはずなのに、その声に逆らえない
しかも、自分でシートベルトまでつけてしまって、これではまるで同意の上でのドライブみたいだ
断じて違う、自分は誘拐されたのだ
「あ、あなたっ、何が目的なんですか!」
「おやおや、何度もそんなことを聞きますね
私は貴方を迎えに来たと言っているじゃありませんか」
男はなれた手つきで、ギアを入れ替え、車のスピードを上げる
「迎えなど、頼んだ覚えはありませんし・・・、私は、アナタのことなんて、知りません・・・!!」
ディストのその言葉に、今まで淡々と前だけを見ていた彼の眼に、僅かな哀愁が過ぎる
「・・・、ジェイドです」
「え?」
「私の名前、ジェイドといいます」
信号、赤色
車は停止線できっちりと止まり、ジェイドと名乗った男は、ディストの顔を見る
「・・・ジェ、イド・・・?」
歩行者信号の青が点滅して、赤に
十字路、信号が青から黄色、そして赤に
自分を見つめる眼も、紅くて
沈黙は少しの間だけで、信号は青くなり、車は再び走り出し、彼は前を向く
「行き先は、車で三時間くらいです
どうぞくつろいでくださいね」
「・・・はい」
会議の開始時間からはすでに一時間が過ぎようとしている
研究所は僅かながら、騒ぎになっているのかもしれない
けれど、そんなことはもうどうでも良かった
隣の彼の名前を呼んだら、何故だかどうでもよくなった
車のスピーカーからは、静かなクラシック音楽が流れている
聞いたことがない曲なのに、どこか懐かしい
近頃、感じることのなかった、安らぎを感じる
再びの赤信号
ジェイドは前の車が停止するのを見てから、己もブレーキを踏む
そして、先ほどから黙り込んでしまったディストの顔を伺い見る
・・・案の定、彼は静かに寝息を立てていた
その幼い寝顔に小さく笑い、流していた音楽のボリュームを少し上げる
「こんなところは変わりませんね」
信号はすぐ青に
ゆっくりと走り出しながら、ジェイドは車内を包む音楽に合わせて、小さく小さく歌っていた
「起きなさい、着きましたよ」
肩を揺さぶられ、ディストの意識は現実に戻る
「・・・え、着く・・・?」
寝ぼけた眼をこすりながら、目の前の男を確認する
赤い眼の、髪の長い男
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ジェ、イド・・・」
ディストは覚えたばかりの名前をたどたどしくなぞる
「着きました。 会わせたい人が居ますので、とりあえず車から降りてください」
「会わせたい人・・・?」
疑問を口にしつつ、言われるがままに車から降りる
辺りを見渡せば、そこは見覚えのない風景
郊外の別荘地という感じで、まだ夕暮れ時だというのに静かな風だけが流れている
「こちらです」
目の前で揺れる長い髪を追いながら、ディストは奇妙な既視感を覚えた
「ここです」
たどり着いたのは、豪華な別荘の中でも一際贅沢な一軒の屋敷
明かりは灯っておらず、本当に人が居るのかと首をかしげる
けれど、連れ出された時と同様に、ジェイドに手を引かれて、その屋敷に入る
薄暗い玄関ホールを抜け、勝手知ったるという風にジェイドは淀みなく足を進める
階段を上り、廊下を進んで、突き当たり
ジェイドは迷わず、その部屋の扉を開けた
「サフィール!」
迎えたのは歓喜に満ちた声と、それを体現するような少し荒っぽい抱擁
「えっ、えぇえぇぇ!?」
ディストは悲鳴に近い声をあげ、その人物を押しのける
「だっ、な、誰、何!?」
突然の展開に、完全にパニックに陥り、ディストは反射的に逃げ出そうとするが、己に回る腕が思いのほか強く自分を拘束する
「会いたかった! すっと探してたんだ、サフィール!!」
「え、さがす・・・? さふぃ・・・?」
戸惑うばかりの単語を言われ、混乱は恐怖に変わる
そして、視線は反射的にジェイドに助けを求めた
「ピオニー、報告したとおりです」
ジェイドはそっと、ピオニーと呼んだ男の肩に手を置き、怯えたディストと引き剥がす
ピオニーは顔をあげ、ジェイドとディストを交互に見る
「本当、なのか?」
「・・・えぇ」
「お前の、こともか?」
「・・・えぇ」
二人の視線がディストに向かい、向けられた本人はビクリと身を竦ませる
「怯えないでください
・・・そうですね、落ち着いて話すために、まずはお茶でも入れましょうか」
ジェイドは微笑みながらも、その眼はどこか寂しげにディストに向けられていた
--*--*--*--*---
またタイムアップ・・・
・・・いい加減、一本で書き起こした方がいい気がしてきた・・・
続くッス
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