忍者ブログ
雑記帳
小ネタ版
[18] [16] [15] [9] [7] [6] [5] [4] [3] [2] [1]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

時折思う

その城は、彼を閉じ込める牢獄のようだと

彼は大事以外は、一切、城外にでないらしい

一日中、この城で仕事をこなし、過ごす

政など家臣にまかせっきりで海を駆け回る元親には、想像すらしたくない生活

そんな引きこもり生活を見かねて、元親はココを訪れるたび、彼を連れ出す

街へ、野へ、海へ

城内では見せない笑みを零す彼が、溜まらなく愛しい


「お前は、幸せを知ってるか?」

元親に連れ出され、海辺まで来た元就へ、彼は太い笑みで問いかけた

「・・・問いの意味が理解しかねる」

国主が一人、外出してる姿が目に付いてはと、彼は普段になく髪を結い上げ、
極力、質素な衣服を着ている

髪と衣服が潮風に吹かれ、揺れる姿を見ていると、目の前の青年が国一つを支えているとは思えない

ほんの少し、世間からずれてしまっただけの、平凡な人

「お前はいつも、国のことばかり考えてる
 国の安寧、国の繁栄、国の幸せ・・・
 お前は・・・元就は、自分が幸せになるということを知ってるか?」

今まで、元親の半歩後ろを歩いていた元就は、不意に足を止める

それに気づいて、元親は振り返る

「・・・しあわせ・・か」

潮風が冷えるのか、己の腕を抱き寄せ、小さく呟く

「元就」

元親は、彼の目の前に手を差し出す


「俺は、お前を幸せにしたい」


――愛しい人よ、この手を取ってはくれまいか?

――そうしたら、強く握り返し、抱き寄せ、このまま攫ってしまおう

――貴方を閉じ込める、あの牢獄には二度と返さない

――俺が、貴方を自由にしてあげる

――俺が、貴方に幸せを教えてあげる

――だから・・・


「元親・・・」

差し出された手を見つめ、元就は小さく呟く

そして、笑う

柔らかく、優しく、暖かく、

そう、まるで――


「私は、幸せだ」


まるで、幸せそうに

「私は、幸せだ
 あの城の中と、戦場しか知らなかった私に、お前は色々なことを教えてくれた
 そして、お前は、私にこうして手を差し伸べてくれる
 私は幸せだ
 お前が居る、お前が教えてくれた」

――嗚呼、嗚呼、貴方は――

「・・・そっか」

元親は、潮風に吹かれる手をゆっくりと引き戻す

「・・・私は、この幸せしか・・・知らないんだ・・・」

その手を見送り、切なげに微笑む

――貴方は、諦める幸せだけを知っている――

---*---*---*---

少しだけ、いつもと違う感じで
PR
COMMENTS
お名前

タイトル

メールアドレス

URL

コメント

パスワード
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
TRACKBACKS
忍者ブログ | [PR]
| Skin by TABLE e.no.ch