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雑記帳
小ネタ版
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その日、暇を持て余した慶次は市街見物に出かけていたが、急に色を変え始めた空を見上げ、
いそいそと現在の居住地である郡山城に戻ってきた

城の門前に着くころに大粒の雨が降り始め、間一髪という所で濡れ鼠になるのを逃れた

春の雨は未だ冷たく、気分屋で激しい

城主に、街の様子を話してやるため、その執務室に向かう途中、廊下から外を眺めながら思う

春は暖かさの始まりであるのに、どうしてこんなにも冷たいのだろうか

空に未だ残る冬の冷たさが、最期の名残りに大粒の滴となって降り注いでいるのかもしれない

ふとふと浮かぶ取り止めのない思考の気泡を潰しながら、駆けることなくゆったりと廊下を歩む

・・・と、その庭先、木陰の下に人影を見止めて、その足を止める

あれは、八重桜の木だ

朝、まだ雨の降る前には、薄紅の花と新緑の葉が絶妙な色合いで映えていたが、
今は雨で花が散らされ、緑が勝っている

その、木の下

傘もささず、それでいて、木陰で雨を避ける風でもなく

その八重桜と同じように雨に晒される、その背中

「・・・・・・元就サン!?」

その後姿の正体にはっと気づき、慶次は驚愕の叫びとともに、廊下を降り、裸足で庭へ駆け出す

雨が強い

「元就サン!!」

肌を滑り、服へ染み込む冷たい滴

「元就サンッ!!」

耳鳴りのように響く雨音の中、ぽつんと佇むその背を掴む

「・・・・・・・・・・・・・・慶次・・・?」

触れられてようやく気づいたような風で、元就は慶次の顔を見上げた

いつもは外に撥ねる髪が、今は濡れてしっとりと肌に吸い付いている

そして、その髪と、衣服には薄紅の花弁が幾枚も舞い降りていた

「何してんだ、風邪引くぞ」

慶次は自分の羽織を脱ぐと、元就の頭上を覆うように両手で広げる

とりあえずは、彼をこれ以上濡らす事はないが、この大雨だ、いつまでもは持たない

何より、よくよく見れば、元就も自分と同じように裸足だった

「・・・あぁ、あぁ・・・すまない・・・」

まるで夢現を彷徨うような頼りない声で己のびしょ濡れの髪を梳きながら呟く

髪に絡んでいた花弁が、今度は手に張り付く

「・・・どうしたんだ・・・こんな・・・アナタらしくもない・・・」

両手は、彼を濡らさないために使ってしまっている

今、その腕が使えたなら、問答無用に彼を抱きしめていたに違いない

今の元就は、酷く薄い

その気配も、意識も、感情も

するりと何処かへ消えてしまいそうだ

「・・・どうした・・・どうしたか・・・
 そうだな・・・桜を・・・見ていた・・・」

ぼんやりと呟き、羽織の隙間から、傍らの八重桜を見上げる

今朝まで咲き誇っていた花はもう幾許も残ってはいない

それらは大地に布を敷くように、樹木の周りで土の一部となっている

「あんなに美しく咲いていたのに・・・
 ・・・こうして雨に散らされては・・・花も寂しかろう・・・」

ぽつりと呟く元就の瞳には色がない

冷酷な鋭さも、演じる微笑も、何もない幼子のような無垢な色

時折見せるこの瞳に、慶次は胸が締め付けられる

本当は、真実の彼は優しい人だ

利己的と、冷酷と、そう言われるのは彼が演じる一面でしかない

その奥で押し込められた、素の彼は、儚い優しさで満ちている

・・・この時代が、彼を『彼』で居させてくれないのだ・・・



「・・・この雨は、きっと花が呼んだんだ」

桜を見上げる横顔に、慶次が言った

「散った花は、土に還る
 そして、それを糧にして、樹はまた花を咲かす
 ・・・今年は寒かったから・・・こうして、葉が出ても花が残ってしまった・・・
 花はきっと・・・早く早く・・・還りたかったんだ」

巡り巡る次の季節のために

「・・・・・・花が呼ぶ雨・・・花に呼ばれた雨・・・か・・・」

元就はそっと、己の身体に腕を回す

それは、寒かったからだろうか

それとも、その身に染みた雨を抱いていたのだろうか、その身に絡む花をかき寄せていたのだろうか

「・・・戻ろう、風邪を引いてしまう」

そう言うなり、素足でぬかるんだ土を踏みしめ屋内へ向かい歩き出す

「・・・あぁ、そうだな」

慶次も連れ添って歩きながら、何気なく八重桜に振り返る

落ちた花は、大地一面を薄紅色に染めている

土に汚れ、腐り、消えていくものだとしても

それは確かに美しかった



--*--*--*--

これぐらいなら、フツウにサイトにアップしてもイイ文量だと、
書き終わったときに気づく愚か者
以下はケイナリの脳内妄想です
色々痛い



Myケイナリ設定では、チカナリが大前提で、更に元親死んでるのが前提です
実は、今回の文章も、ちょこーっとそのイメージが入ってて、
元就がぼんやりと桜を見てたのは元親を思い出してたからで、
盛りに散っていく花に、生き急いで死んでしまった彼を思い映していたから・・・とかだったんですが、
なんか、纏まらなかったです(殺)

前にも書きましたが、ケイナリは、寂しがりな元就が理想です
でも、当然そんな事は表に出さないわけだけど、元親のコトで躁鬱になってる元就を、
慶次が黙って支えてあげたらイイんじゃないかとか、そんな迷妄

慶次は、冷酷を演じる元就とか、演技でしか笑えない元就とか、いまだに元親を思ってる元就とか、
全部ひっくるめて好き。 愛してる。 どの元就も守ってあげる
ただやっぱり、少し寂しくなる。 切なくなる
自分も元就の中で、忘れられない存在になりたくて、無茶をして死にたがる
元就との年の差も、焦燥の一端だったり(慶次は、赤青&ゴールドと同じ19歳だと思ってます)
元就は、そんなワカゾーの心理なんて全部見透かしてる
わかってて、利用しているようで、苦しい
苦しいけど、元親の温もりを知って、それを失って、もう一人じゃ生きて行けない
だから、もう生きたくないのに、毛利家の責任と、慶次が許してくれない
悪循環
慶次のことは必要。 だけど、愛しているかといわれれば、ちょっと違う気がしてる
元就は温もりが欲しいけど、それは「元親の」温もりが欲しいわけであって、慶次じゃない
自分に好意を寄せてくれる慶次を、元親の代用品にしているようで、元就には色々と耐えられない
でも、本当は慶次のコトも好きなんだよ
元親のコトが本当に大事だったから、それを忘れて捨てて、慶次を好きになる事が出来なくて、
自分を追い詰めるばかりの思考の迷宮に、自分で迷い込んでるだけ

元親は、何より元就が幸せになってくれる事を祈ってる
相手が自分でなくても、元就が幸せになってくれるなら、隣を譲る
死の間際、己の死で、彼を束縛してしまった事を悔やんでる
元親は、いつもいつでも、死んでも、元就の本当の幸せを祈ってる

そんな痛い迷妄です
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