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雑記帳
小ネタ版
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※現代パラレルです※
※学園でも妖怪でもなく、何だかよくわからない(オイ、書き手)※



時刻はすでに、1日の境目を過ぎようとしている

それでもこの街には人が絶えない

行き交う人の波をすり抜けながら、元親は何気なく空を見上げる

昼夜を問わない街の光は、夜空を殺してしまった

夜空の死骸はまるで、何処までも続く天井のようで・・・

言うなれば此処は、閉鎖された1個の密室

ぼんやりと思考に耽るうちに、無意識に足が止まっていたらしい

人の波が己を邪魔くさそうに避けるのに気づいて、元親は再び波の一部に還ろうと一歩を踏み出そうとした

その時、

「くっ」

「わっと」

タイミング悪く、向かってきた人とぶつかり合ってしまった

相手は駆けていたらしく、体当たりと表現できるほどの勢いで元親の胸に当たる

「っと、と、大丈夫か?!」

元親に跳ね返される形でよろけてしまった相手を庇うように、反射的に片手を肩に回す

「っあ、は、、すまな・・・ッ・・・い・・・」

よほどの距離を走っていたのか、乱れた息で切れ切れに謝罪の言葉を綴る

ただ事では無さそうな雰囲気に元親は眼を丸くする

綺麗な人だった

肩にかかる髪 切れ長な眼

あいにくの暗さでそのいずれの色合いも認識できなかったが、それはたとえモノクロで見たとしても
綺麗だと形容できる成りをしていた

その根本的な造形、そして何よりまとう雰囲気自体が、『美しい』

「・・・っ! !!」

俄かに慌しくなった周囲に、元親は眼前の人物に釘付けになっていた視線を周囲にめぐらす

見るからに怪しげな黒スーツの男が数人

そのうちの一人が、元親が未だに肩に手を置く青年を指差し、何か吠え立てていた

「ッ、く・・・っ!!」

当人もそれに気づいたのだろう

僅かにもたれていた元親の胸を押し、再び駆け出そうとする

しかし、その駆け出す足を留めたのは他でもない、元親だった

「?!」

突き放すために押した手が、いつの間にやら捕まれている

戸惑いと怯えを帯びた目で、その人は元親を見る

「コッチだ」

元親は、その手を引いて駆け出す

「なっっ!?」

僅かに躓きながら、手を引かれるままに走り出す

「なっ、なんだ!? 何者だ、貴様!!」

捕まれた手を解こうと、叫びながら抵抗を見せるが、見るからに体力が有り余っていそうな
元親に対抗するには、彼の腕はあまりに細い

「アンタ、逃げてんだろ? ほら、後ろも追ってきてるぜ」

雑踏に紛れてはいるが、確かに自分たちを追う群れの足音がある

「貴様は何者だと聞いているのだ・・・!!」

全身から怒気をめぐらす問いに、元親は視線だけ振り返り、ニィっと笑う

「----------。」

その返答に、青年は呆気に取られたような顔をした

そんな顔が少し可愛いと思いつつ、元親は掴んでいた手を握り代え、人ごみを折れて、路地に入る

そして、目の前に地下通路の入り口を見つけると、迷うことなくその階段を駆け下りた



日中は店も開き、地上とはまた違う賑わいのある地下街だが、夜には全ての店にシャッターが下り、
人通りも少ない

平日の夜ともなれば尚更で、今はただ駆ける靴音だけが響く

カツンカツンと甲高い音を立てているのは、未だ名も知らぬ彼の靴だ

元親の靴は軍靴のようなブーツだが、底はゴム製のためさほど派手な音はしない

「・・・」

耳を澄ませば、背後から革靴の群れが追ってきているのが聞こえる

幸い、まだ姿が見える位置にまでは追いつかれていないが・・・

「なぁ」

元親はペースを緩め、彼に並行して走る

「なんッ・・・だっ・・・?」

青年は呼吸を乱しつつも、決して止まる事はなく駆け続けている

見かけによらず、体力はあるのかもしれない

「ちょっと、ガマンしてくれよ」

そう言うなり、元親は不意に足を止め、勢い余ってつんのめりそうになった彼の身体に
腕を回し、軽々と抱き上げる

「なっっ!!」

「うわ、軽いな、アンタ」

再び駆け出しながら青年を横抱きに抱えなおす

「なななな、おっ、降ろせ!! ふざけるな、貴様!!」

彼は抗議を吼えながら暴れるが、膝裏を抱えられ腰が浮いてしまっているため、
さほどの成果は上がらない

「ちょっと辛抱してくれよ
 折角、姿が眩ませても、その靴音じゃ居場所を教えてるようなもんだ」

「ならば裸足で走る!!」

「面白い意見だが、当然却下だな」

抱える腕に力をこめ、駆ける速度を上げる

「しっかり捕まってろ。 大丈夫だ、ちゃんと逃がしてやる」

真横に来た彼の顔に向けて、元親は微笑む

「・・・・・・・・・わか、った・・・」

走ったのとは別の理由で、頬に朱を走らせながら、彼は小さく頷いた

そして、行方なく彷徨っていた腕が元親の首回る

後ろからじりじりと距離を詰めていた、革靴の群れは段々と存在を薄くしていく

きゅっと首に周った腕の温もりに心地よさを感じながら、元親は迷宮のような地下街を駆け抜けた



「ここまで来りゃ大丈夫だろう」

地下街をぐるぐると駆け回り、追っ手をかく乱した後、地下街の終端である階段を上がって地上に帰ってきた

そこは先ほどまでいた繁華街とは全く違い、不自然な静寂に包まれていた

この辺りは、ビジネスエリアで、昼ならまだしも、こんな深夜に人通りは殆どない

「ここいらで適当に身を潜めて、ラッシュを狙って電車に乗っちまえば、
 何処となりでも逃げれるぜ」

階段を上りきると、元親は抱きかかえていた青年をそっと降ろしてやる

「・・・・・・・・・・すまな、い・・・。 恩に、きる」

「勝手に首を突っ込んだだけだ」

ヘラっと笑う元親に彼は戸惑うように視線を彷徨わせる

そんな仕草を眺めながら、元親は地下街を駆け回っている間に浮かんだ思案を口にする

「なぁ、アンタ、逃げる当てはあるのか?」

彼は考えるそぶりもなく、すぐさま首を横に振る



「じゃあ、俺のところに来ないか?」


青年は、この上ないほどに驚いた様子で、切れ長の眼が、まん丸になっている

「まぁ、広い家じゃないし、男二人はちょっとムサいかもだけど、
 こう見えて、料理は上手ぇんだ
 そんで・・・アンタを追う連中が来ても、絶対に守る。 約束する」

「・・・何故・・・?」

困惑する彼の瞳に、嘘偽りなく微笑む

「さっきも言っただろう
 『アンタに惚れた。 一目惚れだ』ってな」

「――――」

「とりあえずは、お試し期間で、1週間、俺の家に泊まっていかないか?」

「・・・お試し期間、か・・・・」

フフっと、彼は初めて笑みを零した

そして、真っ直ぐに元親を見詰める

「・・・名を、まだ・・・」

「元親。 長曾我部元親」

「私は、元就だ。 毛利元就」

ふわりと笑う、元就はやはり綺麗だ

その笑みを見蕩れながら、元親は空を仰ぐ

此処の夜空も死んでいる

だが、夜空の死骸を糧に、何かの花が育つのかもしれない

この街は1個の密室

いつか、夜空を糧に咲いた花は、この街に降り注ぐだろう


---*---*---*---

舞台イメージは新宿
なんとなく、新宿を走る二人が書きたかっただけです
続く・・・カモ?
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